固体物理セミナー (令和元年度 第8回)

固体物理セミナー
(令和元年度 第8回)
(インタラクティブ物質科学カデットプログラム講演会)
日時:1月16日(木)14:40-16:10
場所:基礎工学研究科 G棟215-221セミナー室
講師:島川 祐一教授(京都大学化学研究所)
題目:「異常高原子価状態のカチオンを含んだ酸化物の化学と物理」

要旨:京都大学・化学研究所、固体化学研究グループでは、高圧法や低温トポタ
クティック物質変換といった特異な物質合成手法を駆使した新物質開発を行って
いる。これらの手法により、異常高原子価状態が安定化された遷移金属イオンを
含む酸化物を得ることができる。例えば、1960年代には、高圧合成法の発展に伴
い、SrFe4+O3やCaFe4+O3などの合成が報告され、異常高原子価状態に起因する電
荷不均化(CaFeO3: Fe4+  Fe3+ + Fe5+)のような特異な物性変化が見出された。
我々の研究グループでは、異常高原子価Fe3.75+イオンを含むAサイト秩序型ペロ
ブスカイト構造酸化物CaCu3Fe4O12が、温度誘起サイト間電荷移動(3Cu2+ +
4Fe3.75+  3Cu3+ + 4Fe3+)という新しい現象を示すことを発見している。これ
ら電荷転移は同時に磁気転移と大きな格子変形を伴うが、最近になって、巨大な
エントロピー変化が起こることも見出している。また、低温トポタクティック物
質変換のような新規な合成手法を用いると、異常高原子価イオンの配列次元性を
制御したような物質の合成も可能となってきている。異常高原子価電子状態に起
因する電荷転移は、電荷‐スピン‐格子の相関を中心とする物性研究の恰好の舞
台を提供しており、新物質開発は新規な物性開拓の端緒となり得る。我々の研究
グループで得られた幾つかの新物質を取り上げ、それらの興味深い物性を紹介す
る。

問合先:田中秀和(産研ナノテク棟609号室)
Tel: 06-6879-4280
E-mail: h-tanaka@sanken.osaka-u.ac.jp

* 固体物理セミナーは、物性・未来(物性系)M2必修科目「ゼミナール
Ⅲ」に該当します。