石原一教授(大阪府立大学工学研究科、大阪大学大学院基礎工学研究科)、芦田昌明教授(大阪大学大学院基礎工学研究科)、中山正昭教授(大阪市立大学工学研究科)、一宮正義准教授(滋賀県立大学工学部)らの研究チームは、酸化亜鉛(ZnO)の光学特性を説明する新たな理論を開発し、高品質な結晶を用いてこれを検証することにより、室温で熱散逸※1が始まるより短い時間で光が放射される先例のない高速光現象を世界で初めて確認しました。

ZnOは、窒化ガリウム(GaN)などと同程度のバンドギャップ※2を持ち、青色の発光ダイオード、紫外光の半導体レーザー、紫外光を吸収する太陽電池材料など、多岐に渡る応用の可能性が高く注目を集めています。このような材料の光学過程(光を吸収し、再び放射する過程)を高速化することは熱損失のないエネルギー効率の高い光学素子を実現する上で重要な課題です。しかし、これまで高速化への明確な指導原理がなく、通常、吸収したエネルギーを光として放射するには速くとも数10ピコ秒以上かかると考えられていました。

今回、研究チームにより実証された放射時間は10フェムト秒台と、従来に比べて3桁も高速で、また、室温での熱散逸をも凌ぐ速さであるため、熱発生のない(サーマルフリーな)、次世代の超低エネルギー消費型の光学素子に応用できる可能性があります。

本研究成果は、米国物理学会速報誌『Physical Review Letters(フィジカル・レビュー・レターズ)』に4月20日、オンライン掲載されました。

図1
(a)高品質ZnO試料の原子間力顕微鏡像
(b)ZnO特有の二重の電子帯構造
(c)二重の電子帯構造による双子のアンテナとその協力的光放射の概念図
(d)実験実証された10fs台の高速光放射