大阪大学大学院理学研究科 酒井英明准教授(JSTさきがけ研究者兼任,研究当時:東京大学大学院工学系研究科 助教)、東京大学大学院工学系研究科 石渡晋太郎准教授(JSTさきがけ研究者兼任)、同研究科 池浦晃至元大学院生らの研究グループは、強誘電体と同様な構造転移を室温近傍で示す珍しい導電性化合物を発見し、この転移を元素置換により大幅に(絶対温度約250度から0度まで)制御できることを、電気特性および光学スペクトルにより明らかにしました。また、わずかな元素置換によってこの「強誘電体」的転移を極低温まで抑制すると、熱を電気に変換する効率(熱電能)が著しく増大することを発見しました。この振る舞いは、バンド構造のみを考慮した理論計算では再現できないことから、「強誘電体」的構造歪みに起因する結晶格子の揺らぎや不均一性が、金属特性に劇的な影響を与え得ることを示唆する結果だと言えます。今後は、このメカニズムを指導原理とする革新的な熱電変換技術への応用も期待できます。

本研究成果は、Science Advances誌(日本時間11月12日午前4時)に掲載されました。