大阪大学大学院基礎工学研究科の永井正也准教授らの研究グループは、宮崎大学工学教育研究部の奥山勇治准教授、パナソニック株式会社テクノロジーイノベーション本部の可児幸宗氏と共同でテラヘルツ周波数帯の電磁波を用いて燃料電池中の固体電解質※1におけるイオンが移動する瞬間の観測に成功しました。固体酸化物形燃料電池の電解質中において、電荷担体となる酸素イオンは10兆分の1秒の時間でイオン移動の試行を繰り返した後に酸素空孔に移動しますが、移動直前にはその試行運動が遅くなることが知られています。そこで、近年、大容量短距離無線通信や非接触非破壊検査技術として注目されているテラヘルツ周波数帯の電磁波を用いることで、この運動を捉えることに成功しました。実証実験で用いた安定化ジルコニア※2中のイオンの運動を詳細に解析することで、電気的測定では得られない新しい固体電解質の特徴を反映した情報が得られることを明らかにしました。このような固体電解質のテラヘルツ電磁波による評価は、燃料電池の高性能化に不可欠な固体電解質探索における新たな指標として大いに期待されます。

本成果は、Springer Nature社が発行するオープンアクセスジャーナル「Nature Communications」誌(オンライン)に6月17日(月)18時(日本時間)に公開されました。